勘違い日記 Blog

  • 2026.08.29

【第73話】涙で滲む「脳内リハーサル」

深井
野田さんが手掛けるご葬儀やイベントって、やり直しがきかない一発勝負ですよね。あの独特の緊張感の中で完璧な場を作るために、裏側ではどんな準備をされているんでしょうか?

野田
ご葬儀でもイベントでも、いかに「現場の空気感」を作るかがすべてだと思っています。だから、本番を迎える前の「リハーサル」にはかなりこだわっています。

深井
確かにイベントでは当たり前に行うイメージがありますが、ご葬儀でもリハーサルをされるんですか?

野田
ええ。誰がどこに立って、どう動くのか。それを実際に一度流してみることは欠かせません。頭の中だけで「こう動けばいいだろう」と思っていても、本番さながらにやっておかないと、いざという時にうまくいきませんから。

深井
なるほど。「本番さながらに」というのがポイントなんですね。

野田
ええ。リハーサルだからといって、ただ手順を確認するだけではダメで。マイクの持ち方ひとつとっても、本番と同じように口元に当てて話すのか、それとも胸元で話すのか。それを実際にやってみないと、本当に音が出るかどうかのチェックにはなりませんよね。

深井
確かに! 声を出しているつもりでも、いざ本番でマイクが音を拾っていなかったら台無しになってしまいますもんね。

野田
そうなんです。マイクの音が出ないだけで、それに合わせる照明や進行のタイミングまで全部ズレてしまいますからね。僕らの仕事は一人でやるものではなく、チームで動くわけですから、そういう本番の空気を事前にチーム全体で共有できるかどうかが、プロとしての「場作り」を左右すると思っています。

深井
なるほど。とはいえ、まだお客様もいない事前の段階ですよね。どうやってチーム全体でその「空気」を作り出しているのでしょうか?

野田
そこはもう、イメージの力ですね。例えばイベントの前に自分たちのオフィスでリハーサルをする時でも、僕は頭の中ですでに「現地の会場」に行っているんです。自分が受付のポジションに立っていると想定して、「本日はお越しいただきありがとうございます」と、実際にお客様をお迎えしている時のテンションや顔つきになりきっているんですよ。

深井
へぇ、意識だけを現地に飛ばしているんですか。それを習得するには、相当な訓練が必要ですよね。

野田
僕自身は長年やってきたので自然と入り込めますが、スタッフにとってはそうかもしれませんね。やっぱり最初は皆「会社のオフィス」にいる感覚のまま、手順だけを確認してしまいがちなんです。そういう時は、「まだ現地に来てないぞ! 僕らはもう会場に行ってるんだ!」と声をかけて、皆の意識を引っ張り上げるようにしています。

深井
オフィスのど真ん中でいきなりそう言われたら、慣れていないスタッフの方はちょっと戸惑ってしまいそうですね(笑)。

野田
「何言ってんだ、この人」って思われてるかもしれませんね(笑)。でも長年一緒にやっているスタッフはさすがで、僕と同じようにスッと現地の顔つきになるんですよ。

深井
おお、すごい。そうやって社内で没入感を共有されていらっしゃるわけですね。

野田
そうですね。僕自身、そのシミュレーションに深く入り込みすぎて、リハーサルの段階で感動して涙が出ちゃうこともありますから。

深井
本番前なのに、涙まで出てしまうんですか。

野田
そうなんです(笑)。イベントの最後に流れるエンドロールの映像を思い浮かべながら、「ああ、今日のイベントも無事に終わった、よかったな……」って。

深井
それはすごい……。本番を終えた後の達成感まで先取りしているんですね。

野田
ええ。いざ本番を迎えた時には、もうすでに自分の中で「一度成功させた後」のような感覚で。おかげで緊張感を感じすぎずに、安定して最高の場を作ることができているんだと思います。




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