勘違い日記 Blog
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- 2026.10.24
【第81話】野田流「生きたお金」の使い方
深井
最近、いわゆる「終活」の一環として、身の回りのものを整理したり処分したりするお話をよく耳にします。一方で、野田さんがこれまで多くのお別れの場に立ち会われてきた中で、ご家族に「これは残しておいた方がいい」と感じるものは何かありますか?
野田
結論から言うと、僕は「思い出」だと思っています。形のあるモノではなく、記憶ですね。
深井
なるほど、モノではないんですね。一般的には、家族のために財産や土地などをしっかり残してあげたいと考える方も多いように思いますが、一番大事なのはそこではないと。
野田
もちろんご家族を思ってのことだとは思います。ただ、よかれと思ってお金や不動産を残しても、それがかえってご家族の負担になったり、時には思いもよらないトラブルの種になってしまったりするケースも少なくないんです。
深井
確かに。遺産をめぐって家族関係がぎくしゃくしてしまうといった話は、残念ながらよく聞きますよね。
野田
ええ。それに、お葬式の最後にご遺族の代表の方が挨拶をされるとき、語られるのは決まって「故人との思い出」なんですよ。お孫さんがお祖母様の棺に、生前いつも着ていた少し古くなったセーターを納めながら「お祖母ちゃん、いつもこれ着てたよね」と語りかけている場面に出会うこともあります。
深井
なるほど。残された人たちの心を温めてくれるのは、一緒に過ごした記憶なんですね。お別れの場で実際にたくさんのご家族を見つめてこられた野田さんの言葉だからこそ、とても重みを感じます。
野田
そうなんです。だからもし将来に残せる余裕があるなら、ただ貯めるだけでなく、自分が元気なうちに大切な人たちと「体験」を共有するために使うのがいいんじゃないかと思うんです。例えば家族皆で少し特別な旅行に出かけて、美味しいものを食べたり、美しい景色を見たり。そうやって一緒に笑った記憶は、残された人たちの心の中で生き続けますから。
深井
モノやお金として残すのではなく、元気なうちに「思い出」に変えてプレゼントしておくということですね。ちなみに、野田さんご自身はご家族とどんな思い出を残していきたいと考えていらっしゃるんですか?
野田
年に一、二度の家族旅行も大切にしていますが、実は特別なイベントだけじゃなくてもいいんじゃないかと。というのも、ある年の6月に我が家で飼っていた愛犬が亡くなったんですが、その1週間ほど後に、家のすぐ横を流れる小川のあたりを家族と歩いていたら、ふわっと1匹のホタルが飛んできたんです。
深井
なんだか幻想的な光景ですね。
野田
ええ。それを見て、「きっとあの子が帰ってきたんだね」という話になって。それからというもの、毎年6月になってホタルを見かけるたびに、「今ごろどうしているかな」と自然にその子の話をするようになりました。遠くへ出かけなくても、そんな風に家族の心が一つになる瞬間ってあるんだなと。
深井
素敵なお話ですね。特別な場所に行かなくても、日常の出来事がかけがえのない記憶になっていく。
野田
そうなんです。モノはいつか壊れたりなくなったりしてしまいますが、心に刻まれた思い出は消えません。ただ漫然と日々をやり過ごすのではなく、家族と一緒に見た夕日の美しさを心に焼き付けるように、目の前の瞬間を一つひとつ丁寧に噛みしめて味わう。実はそんな何気ない日常の中にこそ、人生で最高の思い出があるんじゃないかと思っています。
深井
なるほど。そうやって日々を大切に積み重ねていくことが、自分自身にとっても、そしていつか残される家族にとっても、一番の財産になるのかもしれませんね。
野田
ええ。僕がいつも出張へ出かける前に、妻から少し煙たがられながらも必ず握手をするようにしているのも、「今日という日が当たり前ではない」と思っているからなんです。大切な人と温かい記憶を共有するために、お金や心を注ぐこと。それが結果として、人生を最も豊かにする投資になる気がしています。
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